カバン修理職人が使う工具について

カバン修理の際には様々な用途に応じて特殊な工具や薬品を使う事が多くあります。今回はどういった工具をどのようなケースで使用しているのかをご紹介させていただきます。

レザーを裁断する革包丁

文字通り革用の包丁ではありますが、職人によって一番個性があり使用頻度が多い工具です。

革の直線や曲線を裁断する際や部分的に薄くするにはこの革包丁が欠かせません。使用しているうちに切れ味が悪くなることがあります。そういった際には職人自ら砥石で研ぎます。

刃こぼれや刃先の断面を確認しながら研ぎを調整するのも職人の経験と力量が問われます。

色々と使えるガラス板

重厚感があり、丸みのあるガラス板です。部分的に革を薄くする工程や床面を整える際に使用する工具です。

主な用途として

  • タンニン鞣し革の床面「革の裏側」をウエスに薬品を塗布して磨く工程
  • 革の断面(コバ面)にダメージがある場合、用途に応じてヤスリなどでコバ面を滑らかに仕上げてめん棒やスポンジなどで薬品を塗布し磨くことで再び光沢感が戻ります。

 

カバン修理などで使用する薬品とは

トコノール、コバコート、オーリー、コバスーパーなど革の種類や色味に応じて使い分けコバ面や床面を補修していく際に使われるものを指します。

ハイブランドに多いコバの仕上げでは、樹脂コーティングを施している鞄や小物が多くなっています。コバ部分が劣化してきた際にはコバスーパーなど樹脂コーティング剤を塗布して補修したりします。

メーカーによってはタンニン鞣しのヌメ革の製品にはコバ面を磨き輝かせる仕上げがあります。そのような場合トコノールやオーリーなどを塗布し磨き直すことで購入時に近い光沢を取り戻す事ができます。

銀ペン・ダーマトグラフで印をつける

修理にする際に表革に裁断の印をつけるのに使用します。また鞄や小物のステッチを解いていく際に使うなど、幅広く活躍する職人の愛用品です。

銀ペンで書いた印はこすることで消せるのでカバン本体に汚れを付けることがありません。その他にも鞄や小物の内袋や生地交換の際にも実は使用することが多いです。

ネジ捻・ディバイダー

革の表面「銀面」を削らずに筋付けふちの飾りつけとして線を引く事が出来る工具です。

ホックなどを取り付ける金属打ち具

鞄、革小物に付属している金具にはいろいろな種類があり、専用の打ち具が必要です。

革小物や財布に良く使われる金具で多いのがオスとメスで開閉するホックや磁石のマグネットホックがあります。

ホックに関してはブランド別や用途別で大きさも異なりそれに対応できるよう打ち具も大小、オス用・メス用と分かれています。

今回紹介したのは職人が工房で使用する工具のほんの一部です。お客様のバッグをベストな状態で修理するためには職人の技能だけでなく、多くの工具や部材が必要です。今回はそういった職人の工具についてのご紹介でした。